2024年05月

軒ゼロ ではなく  軒深 の特徴は?

近年では軒ゼロ住宅や軒のでが浅い住宅または箱型住宅(パラペット)が人気というか、主流になりつつあります。 もちろんデメリットを把握したうえで選択されているかとおもいます。 一方で大手ハウスメーカーでは、その逆で軒の出が深い住宅も人気が根強く今回は軒のでが深い(多い)住宅屋根のお話をさせて頂きます。 軒の出を深くすることでメリットがある反面、条件や環境、設計力によっては当然デメリットもあるので見た目だけで判断するのではなく軒の意味をしっかりと理解した上で、軒の出を選択する必要があります。

軒の役割

昔の日本家屋では軒の出な少ない家はあまりありませんでした。経験則から深い軒は日本の風土に合っているからだと考えられていた。 軒とは外壁面よりも屋根を外側に出すことで屋根の上を流れてきた雨水や雨が直接が外壁にかかって汚れたり劣化したりするのを防いだり屋根のすぐ下にある窓の日除けをしてくれる部位になります。

軒の出が深いメリット

  1. 重厚感  シュッとしたイメージの軒が浅い家に比べて屋根をしっかり強調するように軒を深くした家の方が重厚感を感じやすいという意味になります。屋根の厚みや種類によりますけど家というよりも邸宅のような少し大きめの家に見せたい、迫力を出したい場合には非常に有効な手段の1つになります。 これは実際に軒の深い家の方が屋根面積が物理的に広くなりますし、寄棟や片流れなど屋根の形が同じで屋根勾配も同じだとすると、軒の深い家の方が屋根の頂点が高い位置になるので見た目のボリュームも比例してアップします。
  2. 雨除けと日除け対策  外壁汚れ防止のメリット以外にも、軒を出して屋根のあるインナーバルコニーにする事で天気に左右されることなく洗濯物を干す事が出来ます。また軒が深いと夏の暑い日差しが窓から入りにくくなるので室内の温度上昇が防げます。
  3. 雨漏りの低減  軒の出が浅かったり、今流行りの軒ゼロや箱型デザインの家に比べて、軒の出が深い家の方が雨漏りのリスクが少ないという意味になります。 工法によって違いますが、基本的に軒と外壁が干渉する取り合い部には、雨が入らないように防水処理がしてあり、万が一雨が侵入しても下に抜ける施工するのが一般的です。ただその防水処理が経年劣化で機能してなかったり適切な防水施工がされてなかったりすると、台風や暴風雨だと雨が吹き上がるので軒が浅いと余計に雨水が侵入しやすくなり雨漏りの原因になったり家の耐久性低下に直結します。

軒の出が深いデメリット

  1. 暗くて寒い  軒の出を深くすればする程その分雨がかからなくなって夏の日差しも避けられる反面、日の光が届かなくなるので室内は暗くなるし冬も寒くなってしまう可能性があります。 極端な例かも知れませんが、見た目の重厚感や雰囲気だけを優先して軒を深くしてしまって、暮らし始めてから寒いとか暗いとなって後悔するパターンも少なからずあるみたいです。 家を建てる地域によって日の角度や日照時間は異なるのでほど良い軒の深さを選択してください。
  2. コストがかかる  軒を出すことでその分屋根本体の面積がおおきくなります。 屋根材はもちろん下地に使われている合板の枚数増加や垂木の長さやサイズも大きくなって、防水や雨樋とか色々な材料が増えてしまうので比例して建築コストが高くなります。
  3. 土地の問題  広い土地に家を建てるとかある程度ゆとりのある計画の場合は考えなくてもよいのですが、一般的には適切な大きさの土地に家を建てる事が多いと思うので条件によっては軒の深さがネックになる可能性があります。 基本的にはどの土地にも道路境界線と隣地境界線の2つがあり、この線を越境して家や塀などの工作物をつくってはダメですが、上空なある軒も例外ではありません。 軒が深い家をつくりたい場合にはその分だけ境界線から下がった位置に家を建てるひつようがあります。 また地域によって土地に大きさに対して建築出来る家の大きさ(建ぺい率)がきまっています。 軒の出が1m以内なら大丈夫ですが、1mを超えた部分は建築面積にカウントされてしまいますので軒の出をたくさん出したい場合には余計に家の面積を小さくする必要があります。
  4. 風のあおりと屋根のたれ  軒の出が深い分だけ、台風の時とか壁に当たった強風が吹き上がって軒が煽られる事で建物に負荷がかかったり、屋根の作りによっては軒の先端部分が経年劣化で垂れる事も起こりえます。そうなると当然、メリットだったはずの雨漏りリスクも増えますし、軒部分が壊れて屋根が落下し大きな損害に発展してしまう可能性も出て来ます。 基本的にはしっかり計算して適切な構造補強をしておけば防げますが、突発的な強風や予期せぬ経年変化もゼロではありません。

時代の変化と環境の変化

昭和→平成→令和と共にマイホームに対する考えも変わって来ました。昭和から平成前期までは比較的に大きな土地に解放感のある家を建て、南側の縁側を広く確保して、来客やご近所さんなどが入りやすく招きやすい家が多かったと思います。 平成中期頃からはマンションなどが増えて、ご近所付き合いも程々に、プライベート重視の方向に変わり、また防犯に対する意識も高まりました。それに伴い戸建て住宅の窓などの開口部が少ない家も増えた来ました。 同時に、不動産の価格も上がり建築資材置場等の物価上昇の影響で最小限の土地の広さと家族分の間取りのある家を求める人が多くなりました。 これらのニーズに答えたのが、ローコスト住宅、軒ゼロ住宅だと思います。軒のでが少ない分、少し狭めの土地でも建ぺい率いっぱいまで必要な分の大きさの家が求められるようになりました。 近年では『家を建てる』というビックイベントは女性目線の意見方が多いい傾向にあります。男性目線的には重厚感を求めがちですが、女性目線ではシンプルに可愛らしいイメージを求めます。  なんだかんだいっても家庭の財務大臣は奥様ですから、奥様の合意がなければ、家を建てる事はできませんよね。(令和の常識だそうです。)  お子様方が巣立ち大きな家が必要無くなり、平屋に建て替える方も増えています。簡単な切妻屋根で軒を深く確保したシンプルないえが人気だそうです。