2024年08月

屋根の傾斜角度と雨漏りの関係

屋根には様々な屋根形状がありますが、その屋根形状は初期設計の段階でお施主様の要望した屋根形状と建物の間取りなどを考慮して設計提案されます。次に使用する屋根材を決めることにより屋根勾配が決まります。お施主様ご本人が使用したい屋根材とイメージした屋根形状が一致するわけではありません。屋根材に適した屋根勾配または屋根勾配に適した屋根材を使用することで数年後または数十年後の雨漏りを回避する事が可能になります。

屋根勾配とは

屋根の傾斜角度を屋根勾配といいます。 傾斜角度が急な屋根を急勾配屋根といいます。 逆に傾斜角度が緩い屋根を緩勾配屋根といいます。 その中間に並勾配があります。屋根の傾斜角度「勾配」は雨漏り防止のカギを握っているのです。 屋根に落ちた雨水を排除するために必要な機能でありますが急勾配・緩勾配ともにメリットとデメリットがあります。

急勾配は6寸勾配以上・緩勾配は3寸以下・並勾配は4寸、5寸と区別されています。  地域や設計また施工者によっては3寸5分以下を緩勾配・4寸以上を急勾配と区分されているところもあります。

急勾配屋根のメリットとデメリット

急勾配屋根のメリットは屋根に落ちた雨水を素早く排出できる事です。勾配が急であれはあるほど雨水の流れが早くなります。そのため雨漏りのリスクが少ない。収納スペースや天窓を扱いやすく、屋根裏利用価値が高い。小屋裏の空間が大きいため下の部屋の断熱効果が期待できる。

急勾配屋根のデメリットは勾配が急であればあるほど、風の影響受けやすく耐風性が落ちる、屋根材や下り棟などが破損しやすい。 また屋根勾配が急勾配になるほど屋根面積が増えるので屋根工事費用が増えます。と同時に施工時に屋根足場が必要になるのでその費用も加算されます。

緩勾配屋根のメリットとデメリット

緩勾配屋根のメリットは棟の高さが低いので屋根面積が抑えられ工事費用が安価になります。 風の影響を受けにくいため屋根材の破損が少ない。

緩勾配のデメリットは急勾配に比べて雨漏りのリスクが高い。ホコリ・ゴミ等が付着しやすく溜まりやすいので劣化が早く進む可能性が高い。シンプルな片流れ屋根なら雨漏りの危険性が少ないですが、寄棟屋根など下り棟板金や谷板金またはドーマ屋根が存在する屋根形状は雨漏りリスクが高まります。屋根と天井のスペースが狭く空気層による断熱効果を期待できない。

並勾配屋根のメリットとデメリット

並勾配屋根のメリットは一般的で広く普及していてトラブルにたいして様々なノウハウが蓄積されている。屋根足場が不要な場合が多い。はとんどの屋根材が選択できる。

並勾配屋根のデメリットはもっとも普及しているので個性が無い屋根デザインになりやすい。

屋根勾配と使用出来る屋根材

屋根材 必要最低勾配
金属屋根・縦葺き 1寸以上
金属屋根・横葺き 3寸以上
スレート屋根(カラーベスト・コロニアル) 3寸以上
シングル屋根 3,5寸以上
陶器瓦 4寸以上
  • 金属屋根・縦葺き  新築・リフォーム問わず人気のあるガルバリウム鋼板をはじめとした金属屋根は縦葺きならば、必要最低勾配は1寸以上です。比較的緩やかに葺く事ができます。屋根の頂高から軒先まで1枚の金属板で出来ているので雨水が流れやすい。(雨水の流れ方向に沿って屋根材を葺くので雨漏りのリスクが低い)
  • 金属屋根・横葺き  新築、リフォーム問わず人気のあるガルバリウム鋼板をはじめとした金属屋根横葺きの必要最低勾配は3寸以上です。縦葺きと比べて雨水の流れを遮る凸凹や屋根材の境目(つなぎ目)が多いからです。3寸未満で使用すると雨漏りします。 横葺き材の中でも段葺きと言う種類があります。製品によっては必要最低勾配が2,5寸以上の製品がありますが長い年月の間に雨水が染み込む可能性があるため横葺き全般的に必要最低勾配は3寸以上は確保することをお勧めします。
  • スレート(カラーベスト・コロニアル)   スレート(カラーベスト)に必要最低勾配は3寸以上です。これより緩い勾配で葺いてしまうと雨水の停滞が塗膜の劣化を早目てしまう原因となります。何よりスレートの重ね部分から雨水が浸み釘穴から雨漏りしてしまいます。また防水材のルーフィングが劣化していると雨漏り発生率が高くなります。
  • アスファルトシングル  ガラス繊維にアスファルトを浸透させたシート状の屋根材をアスファルトシングルの必要最低勾配は3,5寸以上です。 表面に小さな石が吹き付けられていてザラザラとしているため雨水の流れが滞りやすい。 劣化と共にホコリやコケが生え雨水が浸み込みやすく雨漏りしやすい。
  • 陶器瓦  日本では馴染み深い陶器瓦は必要最低勾配は4寸以上です。非常に耐久性が高い屋根材ですが、屋根瓦を1枚1枚重ね葺く事で実際よりも角度が緩くなります。そのため効率よく雨水を流すにはある程度の勾配が必要です。

屋根勾配の表記法

尺貫法勾配(寸法勾配) 1寸は約30,3㎜です。尺貫法勾配とは水平の長さ10寸(約303,03㎜)に対して垂直に何寸角度がついているか表記する方法です。 また分数勾配は同じように水平の長さと高さを分数で表す方法もあります。

屋根勾配は様々な影響を及ぼす

屋根の勾配はデザイン性と機能性で決めます。4寸や5寸勾配の並勾配は緩勾配や急勾配のメリットを取り入れつつそれぞれのデメリットを補いやすい屋根勾配です。 緩勾配の場合は雨漏りを防止するために使用できる屋根材が限られますが、並勾配は使用できる屋根材の選択肢が広がります。屋根には瓦・金属・スレートなど様々な素材が使われますが、それぞれの素材には必要最低勾配が決められています。一般的に瓦屋根4/10寸・スレート屋根3/10寸金属屋根3/10寸が必要最低勾配とされています。4寸~5寸勾配の屋根を選考する施工時に屋根足場が必要となるかは施工業者によって異なりますが、4寸~5寸勾配の並勾配を選べば雨漏りが少なく実用性が高くオススメです。 メンテナンスでも急勾配は突風などで瓦などを修理する時に屋根足場が必要になりメンテナンスコストが高くなります。逆に緩勾配だと雨漏りリスクが高いためにこまめなメンテナンスが必要となります。 メンテナンス面でも並勾配が優位です。屋根の勾配は緩急によって外観の雰囲気が変わるだけでなく屋根の寿命にも影響を与えます。住宅のニーズは住む人に異なり、緩勾配急勾配の特徴をよく知り好みにあった住宅づくりをしてください。